屋島総合病院

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人工関節外来について  整形外科 浅海 浩二
 ◎はじめに
 

 平成22年4月、私(浅海)の当院への赴任にともなう人工関節外来の開設に引き続き、この度平成23年1月より専門性の高いスタッフとともに人工関節センターを開設させていただくことになりました。
 私は岡山大学整形外科学教室で医学博士を取得し、主に岡山大学病院整形外科にて股関節外科(小児の先天性股関節脱臼から老人の変形性股関節症まで)治療を行っておりました(〜平成18年岡山大学整形外科病院講師)。その途中、平成15年には日本で一番多くの人工関節置換術を行っているえにわ病院(増田武志先生、北海道恵庭市)へ、平成18年には世界のセメントレス人工股関節置換術の聖地ともいえるAnderson Orthopaedic Clinic(Charles Engh先生・米国バージニア)に留学および従事し最先端の股・膝関節の人工関節置換術をそれぞれ習得いたしました。その後、岡山赤十字病院にて約4年間股・膝関節の人工関節置換術を担当した後に、私の地元である当院で本格的な関節外科治療(主に人工関節)を行う目的で赴任することとなりました。
 日本人の高齢化が進むにつれて、股・膝関節の軟骨がすり減り、股・膝関節の悪い患者様の数は増加の一途をたどっております。我が国においても最近一年間に約16万例(人工膝関節置換術7万例、人工股関節置換術4万例、人工骨頭置換術5万例)の人工関節置換術が行われており、今後ますますその数は増えていくことが予測されております。 私一人の努力では、数多い全ての患者様の治療に携わることはとうてい不可能ですが、私の願いは地元の香川県において、最先端技術を駆使することにより、股・膝関節が悪くお悩みの患者様に安全で確実な人工関節置換術を提供することです。それにより一人でも多くの患者様が問題なく股・膝関節の苦痛から解放されることを願います。

   
 ◎人工関節置換術とは
  1.人工股関節置換術
  人工股関節手術とは変形性股関節症や関節リウマチ、大腿骨頭壊死、骨折などにより変形した関節を、金属とポリエチレンなどでできた人工股関節に入れ替える手術で、THAといいます。人工股関節にすることで痛みがなくなり、股関節の動きがよくなり、歩きやすくなります。股関節の悪い患者さんにとってTHAは痛みのない生活を取り戻してもらい、日常生活の質を高める治療効果の高い手術です。
 
2.人工膝関節置換術
人工膝関節手術とは変形性膝関節症や関節リウマチなどにより変形した関節を、金属とポリエチレンでできた人工膝関節に入れ替える手術で、TKAといいます。人工膝関節にすることで痛みがなくなり、膝関節の動きがよくなり、歩きやすくなります。薬や注射、リハビリを行っても膝関節が痛く歩くのも大変な状態の患者さんにとってTKAは痛みのない生活を取り戻してもらい、日常生活の質を高める治療効果の高い手術です。膝の痛みを我慢して畑仕事をしたり、膝が痛いから速く歩けずご友人と旅行に行けなかったりしたのが、痛みなくできるようになります。また、変形性膝関節症に伴って生じたO脚も、TKAで矯正することができます。
   
 ◎当院の人工関節手術の特徴
  1. 安全で確実な人工関節置換術を提供すること。
(当院は総合病院でありその利点を生かして、経験豊富な麻酔科医師、循環器科医師などと連携して安全な医療を提供します。)
  2. 香川県内ではほとんど行われていない最小侵襲手術(MIS:エム・アイ・エス)やナビゲーションシステムなどの最先端技術を使用することにより、早期の回復が可能になり、正確に人工関節が設置できることにより長期成績についても向上します。
  3. 当院は地域密着性を重視しているため、リハビリを長くしたい方には、回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟に移り長期間リハビリをすることが可能です。(もちろん最小侵襲手術によって術後2〜3週で一般的には退院可能と思われますが、いろいろな事情で長期の入院リハビリを希望される方は術後2ヵ月程度の入院が可能です。)
     
 ◎最先端技術について
  1.MIS人工関節手術
   

 MIS(エム・アイ・エス)とはMinimally Invasive Surgeryの略です。日本語では最小侵襲手術といいます。皮膚の傷が小さく、体へのダメージが少ない手術という意味です。
 一般的な人工関節手術では股・膝関節とも15〜20cmの傷を必要とし、筋肉へのダメージも大きいものでした。そのため手術後の痛みが強くなかなか筋力も回復せず、入院は2〜3ヵ月必要でした。当院ではMISによる手術によって従来の半分ほどの傷で人工関節手術を行っています。MIS人工股関節は8〜10cm、MIS人工膝関節は10〜12cmの傷で行っています。MISは傷が小さいだけではなく、筋肉や腱へのダメージも少ないため術後の回復がとてもはやく、股・膝関節とも早期に杖での歩行が可能になり、入院期間は2〜3週間ほどになります。
 MISはどの病院でも行っている手術法ではありません。香川県内でもMISを行っている病院は限れられており、当院は数少ない病院の一つです。また、MISはとてもメリットが多い手術法ですが、特殊な方法のためトレーニングを受けた医師でなければ良い結果になりません。私は岡山大学病院にて国内でも早期の平成15年よりMISを導入し実践してきました1-3)。

(参考文献)
1) 血友病性股関節症に対するMIS (minimally invasive surgery)の経験
 横山明人、浅海浩二、三谷 茂、黒田崇之、橋詰博行
 中部日本整形外科災害外科学会雑誌 48:499‐500,2005.
2) 仰臥位でX線透視イメージを用いた前側方進入路によるMIS-THAの手術手技
 三谷 茂、藤原一夫、浅海浩二、遠藤裕介、松田和実
 日本人工関節学会誌 36: 320-321, 2006.
3) 後側方アプローチによるMIS人工骨頭置換術の試み
 浅海浩二、東原信七郎、小西池泰三、高田英一、梅原憲史、那須正義
 中部日本整形外科災害外科学会雑誌 50: 1067-1068, 2007.

     
  2.ナビゲーションシステムについて
   
     人工股関節置換術では、骨盤側の臼蓋カップと大腿骨側のステムのサイズ、設置位置により術後の人工関節の動きや安定性が決まります。位置が不適切な場合、脱臼や脚長差、部品の磨耗、可動域制限の原因になります。
 従来の手術器具を用いた方法では設置位置にばらつきが生じるという問題がありましたが、当院ではこのばらつきを解決するため、ナビゲーション支援のシステムを導入しています。
 カーナビで出発前に到達位置を登録しておくとその指示通りに運転すれば目的地に到達できるのと同様に、ナビゲーション支援による人工股関節置換術では、術前に個々の患者様にあった人工関節のサイズと位置を術前骨盤CT画像とコンピューターを用いて設計します。
 術中はモニターに手術道具の位置がリアルタイムで表示され、それを見ながら計画した位置に人工関節を設置します。特に変形の強い手術の難しい患者さんもしくはMISで手術を行う際にもより正確に手術を行うことが可能になり、それにともない長期成績も期待できます。私は岡山大学病院にて国内でも早期の平成16年よりナビゲーションシステムを導入し実践してきました4-6)。
 当院では平成22年にナビゲーションシステムを香川県内で初導入し、いかなる患者様に対しても安全で確実な人工股関節置換術を提供することが可能となりました7-13)。

(参考文献)
4) セメントカップの設置におけるCT-based navigation systemの使用経験
- 臼蓋に骨移植の必要な亜脱臼性股関節症例について -
 浅海浩二、三谷 茂、遠藤裕介、黒田崇之、尾封q文
 日本人工関節学会誌 36: 310-311, 2006.
5) ナビゲーションシステムを用いた側臥位セメントレスTHAのカップ設置の検討
 遠藤裕介、三谷 茂、藤原一夫、黒田崇之、鉄永智紀、尾 敏文、浅海 浩二
 日本整形外科学会雑誌 81(4): S392, 2007.
6) Use of navigation improves precision of cup placement in cemented THA done for severe dysplasia
 Koji Asaumi,  Shigeru Mitani,  Hirosuke Endo,  Kazuo Fujiwara,  Toshifumi Ozaki, Hiroshi  Egawa AAOS
(American Academy of Orthopaedic Surgeons) 75th Annual Meeting, 2008.
7) Navigation systemを用いた、第二世代HXLPE(X3)と36mmセラミック骨頭の使用経験
 浅海浩二、安藤健夫、香川好男、弓手康正
 中国・四国整形外科学会雑誌 23(1): 228-229, 2011.
8) 輸血不能患者に対するNavigation使用THAの経験
 浅海浩二
 中国・四国整形外科学会雑誌 23(2): 425, 2011.
9) 90歳の反復性脱臼に対しnavigation systemとconstrained cupを用いた治療経験
 浅海浩二
 中国・四国整形外科学会雑誌 24(1): 189, 2012.
10) 亜脱性股関節症に対するCT based navigation systemとTaperlock型cementless modular neck stemの使用経験
 浅海浩二、安藤健夫、弓手康正
 日本人工関節学会誌 43:247-248, 2013.
11) CT based navigation systemを用いたTritanium Acetabular Shellの使用経験
 浅海浩二、真鍋博規、弓手康正、安藤健夫
 日本人工関節学会誌 44: 333-334, 2014.
12) CT based navigation systemを用いたTrabecular Metal Shellの使用経験
 浅海浩二、真鍋博規、弓手康正、安藤健夫
 Hip Joint 41: 958-960, 2015
13) オフセットリーマー・インパクターを用いたCT based navigation THA 従来法との比較検討
 浅海浩二、真鍋博規、弓手康正、安藤健夫  日本人工関節学会誌 46: 303-304, 2016.
     
 
 ◎当院における治療の流れについて
  1. 初診の方(紹介状をお持ちでない方)は月曜日午前中に、浅海の外来へ受診してください。(遠方の方は休診等の場合がございますので受診前に当ホームページの臨時休診情報を確認してください。紹介状を持参することが可能な方は治療を円滑にすすめるために是非紹介状を持参してください。)
  2. 診察し現状についてご説明いたします。セカンドオピニオンなどで意見だけお聞きになりたい方はその旨申し出てください。(当然可能です。)人工関節置換術の適応であり当院で治療を希望される場合は手術日を予約して帰っていただきます。
  3. 予約した手術日の約2〜3週前に受診していただき、術前検査および自己血貯血を行ってもらいます。内科的な合併症などがある場合は別に受診が必要になる場合があります。
  4. 手術前日の午前に入院となります。(ただし月曜日手術の場合は、金曜日入院になります。)
  5. 手術を行った後、基本的には手術翌日より離床、歩行を行います。
  6. 約2週後に創部が癒え、歩行および日常生活動作が問題なければ退院を許可します。退院の目安は術後3週としております。ただし当院には長期入院リハビリテーションが可能です。社会的理由などで引き続き入院リハビリテーションが希望の方は可能です。
  7. 退院後は、定期検診を行いますが、ある程度おちついた場合は人工関節の定期検診は1〜2年に一度程度の受診になります。
     
 ◎当院における手術実績について
 

 人工関節置換術は、厚生労働省が各医療機関に手術数の届け出を課している難易度の高い手術の一つに指定されています。平成23年1月の人工関節センターを開設後に厚生労働省に届け出た当院の人工関節置換術を下記に示します。まだ当センター開設後短期ではありますが、香川県内においてはトップクラスの症例数です。

 平成23年度  158例(膝関節:108例、股関節:50例)
 平成24年度  175例(膝関節:95例、股関節:80例)
 平成25年度  200例(膝関節:125例、股関節:75例)
 平成26年度  207例(膝関節:117例、股関節:90例)
 平成27年度  241例(膝関節:130例、股関節:111例)
 平成28年度  245例(膝関節:130例、股関節:113例、肩関節:2例)
 平成29年度  342例(膝関節:166例、股関節:168例、肩関節:8例)

(人工骨頭置換術は除いています)
  ↓手術実績に関するページ(外部リンク)↓
  「香川県の人工関節置換術の治療実績・手術件数」
 
 ◎最後に
   全国には、私が学会等で情報交換をさせていただいている、人工関節置換術のトレーニングを積み、信頼できる先生方がたくさんいます。私自身も、地元の香川県において、安全で確実な人工関節置換術が提供できる一術者として、この分野での地域医療への貢献に努力してまいりたいと思います。股・膝関節の痛みでお悩みの方はご相談に乗らせていただきたいと思いますので、是非人工関節外来へお越し下さい。
 
 ・関連リンク

 股・膝関節の痛みで悩んでいる方へ、人工関節を用いた整形外科治療に関する専門情報サイトです。考え方もいろいろありますので、ぜひご覧下さい。
 ・人工関節ライフ
 ・人工関節の広場
 ・人工関節ドットコム
 ・関節が痛い.com


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