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関節リウマチとステロイド薬

ステロイドと上手に付き合う方法(内科 平石 宗之)

リウマチに対してステロイドが使われ始めたのは今から50年程前です。しかし、その頃に用いられていたステロイド量は医師によってまちまちで、時に大量に使われることがあり、その副作用のためにいつしかステロイドは危険な薬として使用されなくなりました。その頃のステロイド薬に関してNSAIDと同じような作用で、しかも副作用が多いということでステロイド薬は見放され、NSAIDの研究が進む時代になったわけです。
ところが最近になって、ステロイド薬が改めて見直されてきました。特に早期のリウマチ患者さんに対して少量のステロイド薬は、関節痛の軽減や筋力の回復のみならず、関節破壊の進行を遅らせる作用があることが明らかになったのです。
しかし、ここで問題になるのはステロイド薬の副作用です。ステロイドには、肥満、高血圧、糖尿病、感染症、白内障そして最も問題なのが骨粗鬆症なのです。
それではどれぐらいの量のステロイドでこのような副作用がおこるのでしょうか?残念ながら日本で調べた報告はないので欧米のデータを基にしてステロイドの副作用を予防するための注意点をお話しします。

  1. 肥満
    プレドニン10mg以上を服用している方は特に注意が必要です。顔が丸くなる、いわゆる満月様顔貌(ムーンフェース)を予防する方法は残念ながらありませんが、ステロイドの減量により元に戻ります。ところがそういった患者さんの中で、顔は丸々のまま、体重がどんどん増えてお腹に脂肪が集まって手足が細くなるという方がいらっしゃいます。
    ステロイド薬を服用すると非常にお腹が空いてきます。三度の食事では飽きたらずについついおやつを食べてしまう。そういったことを繰り返すうちに太っていってしまうのです。予防は一つ!余分なカロリーを摂らないことです。
    そのためには、
    1:間食はしない。
    2:ながら食い(テレビを見ながら。新聞を読みながら)はしない。
    3:早食いをしない。
    4:どか食いはしない。
  2. 高血圧、糖尿病
    プレドニン10mg以下であればそれ程心配する必要はありませんが、糖尿病や高血圧がステロイド治療前からある人は増悪することがあるので注意が必要です。また血のつながりのある方で糖尿病、高血圧があれば気を付けないといけません。1)と同様に食事の摂り方に注意してください。
  3. 感染症
    これも2)と同様にプレドニン10mg以下であれば心配はいりませんが、20mg以上服用している患者さんは感染予防を心がけてください。
    具体的には外出時にマスクをする、家に帰ったらうがいをする、冬は人混みを避けるなどがポイントです。
  4. 白内障
    ステロイド服用患者さんでは多いという報告がありますが、どれぐらいの量で、どのくらいの服用期間で起こりやすいかは不明です。
    プレドニン10mg以下であればそれ程心配する必要はないと思いますが、年に一回は眼科で診察を受けるようにしましょう。
  5. 骨粗鬆症
    骨粗鬆症についてはプレドニン7.5mg以下であれば危険は少ないと言われていますが、2002年にプレドニン6.8mgでも骨量が少なくなる傾向にあるという論文が米国で出ました。従って今の時点ではこれぐらいのステロイドなら大丈夫という量はありません。そのため骨粗鬆症の予防が重要になってくるわけです。
    アメリカ・リウマチ学会では骨粗鬆症予防のためのガイドラインが2001年に発表されました。ステロイドを服用している患者は全例、カルシウム・ビタミンD3の補充療法を行い、特に閉経後女性でプレドニン5mg以上を3か月以上続ける患者は、ビスフォスフォネート製剤または女性ホルモンを用いるように勧めています。
    特に日本人は、カルシウムの摂取量が少ないので、カルシウムを多く含んだ乳製品や大豆・魚を積極的に食事に取り入れることが大切です。

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